在来ジャガイモプロジェクト

 小菅村のような中山間地域には、固有のジャガイモの在来品種が存在する地域ところが多くあります。前年に収穫したジャガイモを種いもにして栽培し、翌年植える種いもを自家採取する、ということを繰り返してきました。急傾斜地の限られた広さのなかで農業がおこなわれ、農業を営むにはとても厳しい環境ですが、地域の人たちは「〇〇村で作るジャガイモは美味しい」と言って大切に栽培しています。

 在来品種のジャガイモは、1833(天保4)年頃におこった天保の飢饉の際に各地に広がり、庶民を餓死から救ったとも言われています。それから200年近く経った現在まで毎年栽培して種いもを、長く受け継がれてきています。

 しかし、かつては多くの農家で栽培されていたジャガイモの在来品種ですが、最近では私たちが普段食べる品種(男爵やキタアカリ、メークインなど)に比べて収量が少ないことから、村の農家さんが栽培する品種もそういった収量の多い品種へと切り替えられています。

 少子高齢化による農業人口の減少、急傾斜地での農業の厳しさ、などといった地域や生産者が抱える課題を共有し、継続的な生産ができるような仕組みを作ることで、次世代へ在来品種を継承していきます。

源流域の在来ジャガイモ

 小菅村近隣や、他源流域の市町村で在来ジャガイモを栽培している方に声かけをし、種いもを分けていただきました。

ふじ① ◎守重廣子山梨県小菅村
ふじ② ◎加藤信隆山梨県小菅村
ふじのねがた◎山梨県上野原市
おいねのつるいも◎松岡賢二東京都檜原村
立ち枯れいも◎鈴木俊史群馬県上野村
赤いも◎鈴木俊史群馬県上野村
つやいも山梨県丹波山村
落合いも山梨県丹波山村
治助東京都奥多摩町

 ◎印は2022年度源流大学で栽培したもの。印のない品種は、源流大スタッフが現地を訪れて栽培の様子を見学。

左:東京都檜原村の「おいねのつるいも」生産者松岡賢二さん(中央)

右:群馬県上野村で「立ち枯れいも」および「赤いも」を受け継ぎ栽培している上野村の鈴木俊史さん。(写真中央)

 3月に種いもを持って小菅村までご来村くださいました。

 下の写真は、今年度手に入った種いも各種です。「ふじのねがた」以外の在来ジャガイモの種いもは、一般的な品種のものと比べても小さく、30~40g程度のものが多いのが特徴的です。

 小菅村の「ふじ」は2人の村民から種いもを分けていただきました。それぞれ分けて管理して、いもの形状や芽の状態、成長後の様子を観察しています。

ふじ①(小菅村)
ふじ②(小菅村)
ふじのねがた(上野原市)
おいねのつるいも(檜原村)
立ち枯れいも(上野村)
赤いも(上野村)

 

ジャガイモ植え付け~成長の記録

 ジャガイモは3月頃に植え付けるのが一般的ですが、標高が640m程度と比較的寒冷な気候の小菅村では、3月まで地中が凍結していたり、5月上旬まで霜が降りることもあることから、4月中旬~5月上旬に植え付けることが多いようです。昔は5月上旬の植え付けでも良かったようですが、近年は高温になるのが早く、植え付けが遅くなると、高温に弱いジャガイモは十分に生育する前に高温にあたり枯れてしまうことから、現在では4月中に植え付けることが多いようです。

 源流大学では、4月13日(立ち枯れいも、赤いも)、16日(ふじ、ふじのねがた、おいねのつるいも)に植え付け作業を行いました。なお、在来品種以外のジャガイモは、キタアカリ、メークイン、ノーザンルビー、シャドークイーンの4種を栽培しています。

 芽が出てきたのは、植え付けから2~3週間ほどたった頃です。

ふじ①(小菅村)
ふじ②(小菅村)
ふじのねがた(上野原市)
おいねのつるいも(檜原市)
立ち枯れいも(上野村)
赤いも(上野村)

土寄せと落ち葉マルチ

在来品種(立ち枯れいも)の区画
キタアカリ/メークインの区画

 5月後半のころ土寄せの作業を行います。株の根本に土を盛り、地下茎につくジャガイモが大きくなる場所を作ります。この作業は、土を起こして再度土壌を柔らかする、生えた雑草を取り除く意味もあります。

 小菅村で昔から農業をやっている方たちは、土寄せの作業にあわせて畝の間に落ち葉や藁を敷きます。これは、雑草が出てくるのを防ぐ天然のマルチとして、また人が歩いたり雨が降ったりした際の地面へのダメージを抑えたりと、様々な効果があります。

 上の写真は、左が在来品種のジャガイモ(立ち枯れいも)、右がキタアカリ/メークインです。キタアカリやメークインは葉が大きく広がり、畝間を覆いつくしているため雑草の成長が抑えられています。一方、あまり大きく葉が横に広がらない在来品種を植えた区画では、畝間に落ち葉を敷くことで雑草を抑える効果がみられました。

 冬の時期に道路脇の落ち葉を集めておき、翌年には畑でマルチとして使い、さらに耕起する際にすき込むことで肥料として畑に還る、といった昔から栽培されていた在来品種には、その特徴にあった栽培方法がおこなわれています。

ジャガイモの花比べ

 6/10頃になると、ジャガイモの花が咲き始めました。

 花が咲き始めた頃、咲いた数も多く特に目立ったのは、「おいねのつるいも」と「ふじのねがた」でした。一方、小菅村の「ふじ」の①はゼロ、「ふじ」②と「赤いも」は花が咲いた株はいくつかで、大半の株で花が見られませんでした。

※小菅村の「ふじ」①は花が見られませんでした。

ふじ②(小菅村)
ふじのねがた(上野原市)
おいねのつるいも(檜原村)
立ち枯れいも(上野村)
赤いも(上野村)

 また、今年度源流大では栽培できませんでしたが、お隣の丹波山村で栽培されている在来品種「落合いも」「つやいも」、奥多摩町の在来品種「治助いも」を見ることができました。

落合いも
つやいも
治助いも

 6月下旬の梅雨明けから突如訪れた猛暑により、ジャガイモの地上部は枯れはじめました。まもなく収穫できます。

7月31日(日)には、ジャガイモ各種の収穫をした後、蒸し・煮る・焼くなどの各種調理法で食味調査を行う「ローカルポテトサミット」を開催いたします。

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